【エッセイ】養蜂日記その1「今日も働く、そして食べられる」



「ものかきけものみち」を読んで下さっている皆様、いつもありがとうございます。ゾウムシ村長です。
私は福岡県に住んでおり、ニホンミツバチの養蜂を行っています。
今回は、ミツバチたちの観察日記をお送りいたします。
皆様に少しでも、ミツバチや生き物に興味を持っていただけたら嬉しいです。


<1:ミツバチへの挨拶>



こちらが巣箱です。

今は趣味レベルなので1つしかありませんが、いずれ増やしていこうと考えています。


季節は晩夏。咲き誇る花々から蜜と花粉を存分に集めて、巣は活況を呈しています。

蜂たちが外に溢れ出し、元気な羽音を響かせます。


暑い時期、蜂たちは巣の外で過ごすことも多いです。

しかしこの巣は本当に定員オーバーで、彼らは庭キャンプを余儀なくされています。

先日九州を襲った大雨の際も、身を寄せ合って風雨に耐えていました。


では、蜂たちにいつもの挨拶をしましょう。



巣箱に手を置きます。それから「お疲れ様でーす」とか「景気はどう?」と話しかけます。

ニホンミツバチは人の匂いを覚えるので、穏やかに接すれば「この人間は敵ではない」と認識するようです。


蜂たちは触角を私の手に触れさせ、離れるという行為を繰り返しました。私のことを探っているようです。

私は左手を引っ込めて、右手を出してみました。それからしばらくすると……



一匹が指に乗りました。そして、私の皮膚をかじり始めました。

「いてててててて」

マチ針で引っ掛かれたような鋭い刺激。どうして噛むのでしょう。よく分かりません。

人間の赤ちゃんのように、物を口に入れて感触を確かめているのでしょうか。



<2:ミツバチたちの不思議な行動>


巣箱には「覗き窓」を設置しています。箱の一部を丸形にくり抜き、中の様子を見られるようにしたものです。



黄色い蜜が溜まっている様子が分かりますね。

ところが……



こちらの覗き窓では、働き蜂たちが窓のフタを蜜蝋(みつろう)で塞いでしまいました。

多分、仕事にあぶれた蜂たちが、それでも何かしようと思って余計なことをしてしまったのでしょう。

このあたり、人間社会でもありがちな光景です。



一方こちらでは、数匹の蜂が腕(脚)を組んで連なっています(赤丸で囲んだ部分)。

何をしているのでしょうか。

私の師匠に尋ねたところ、どうやら分蜂するための練習をしているようです。


ミツバチは春になると、新しい女王を生みます。

旧世代の女王は配下の働き蜂を引き連れ、巣を出て新しい住処を探します。

これを分蜂(ぶんぽう)と言います。


分蜂した群はすぐに新しい巣に入るのではなく、しばらく(数時間~2日ほど)木の枝などで塊となって過ごします。これを蜂球(ほうきゅう)と言います。

蜂球は、ミツバチ自身が支柱となって作られます。

上記写真の蜂たちも、自分たちがその柱となるべく鍛錬しているのかもしれません。



<3:キイロスズメバチ襲来>



観察を続けていると、不意にキイロスズメバチが飛んできました。ミツバチを狩りに来たのです。

巣箱の周りを飛んで様子を窺うスズメバチ。ミツバチたちは一斉に体を震わせました。
これはシマリングと呼ばれる威嚇行動で、「シャアアアアーッ」と高い音を響かせます。一斉に震えるので、全体が波打っているように見えるのです。
この群は勢力が強いので、スズメバチも迂闊に手を出せない様子。しばらく睨み合いが続きます。


そのとき、一匹のミツバチが巣から飛び立ちました。
そこからは一瞬。スズメバチは疾風のように素早く、最短距離を飛んでミツバチを捕らえたのです。


私はこのとき、スズメバチの駆け引きの上手さに舌を巻きました。
巣は大勢のミツバチが守っており、容易に陥落することはないでしょう。
しかし守衛だけが彼らの仕事ではありません。蜜と花粉の採集に行かなければならないのです。
スズメバチは巣を攻撃する素振りを見せながら、採蜜担当の蜂が巣を離れる、その一瞬を狙っていたのです。



近くの葉っぱに止まるスズメバチ。クッキング開始です。
体を丸めてミツバチをがっちりとホールド。その強靭なアゴでミツバチを噛み砕き、唾液を混ぜて肉団子にします。
ミツバチの頭や翅を切り落とし、程よい大きさに成型していました。


キイロスズメバチはこの肉団子を巣に持ち帰り、幼虫に食べさせます。
その際、幼虫が分泌する液を成虫が飲むのです。


ミツバチとキイロスズメバチ。両者の戦いはこれから本格的になっていくでしょう。



<4:ミツバチは面白い>



私はミツバチが好きで、今年からついに養蜂を始めました。
実際に彼らと接すると、テレビや図鑑では分からない様々な行動が見えてきました。
社会性昆虫は完全に合理性で動くのだと思っていたのですが、意外と間抜けで可愛い一面があります。


また一匹一匹、慎重だったり好奇心旺盛だったり変な奴だったり、性格に違いがあるように感じます。

これからもじっくり彼らと語り合い、理解を深めていきたいです。


近々ハチミツを採るので、その様子もいずれお伝えできればと思います。


(おしまい)