ゴー宣道場タイムライン

第2回 女系継承は皇統断絶に非ず

平成22年5月9日開催


■その1

【小林師範の挨拶】

03:15~

小林/我々は「道場」でやる。最終的にはお祭り的な感覚ではなく、5人でもやろうという感覚でやる。

延々とエンターテインメントとしてやるのではなく、公論を作ろうという場である。

 

07:25~

小林/こういう風に集めたときに、どうしてもアンチ小林よしのりが潜り込む。

今回は女系容認か男系かの話なので、男系なら男系の立場で大いに話し合おうじゃないか。

自分で決め込んで信仰にするのではなく、そっちの立場で質問してもらえればいい。

敵味方という話ではなく、本当に考えていこう。

 

10:45~

小林/この問題で一番最初に戦ったのが高森さん。

ネットで大量にバッシングを受けながら、孤軍奮闘していた。

わしが入って、徐々に状況が変わってきた。

高森さんは専門家。まずは専門家からの話を聞きましょう。

 

 

【高森師範の基調講演】

12:50~

高森/皇室典範をどう改正するのか。本来であれば、これは政治家や国民が関与すべき世界ではない。

しかし残念ながら現在の憲法では政治的案件になっている。これが明治の典範と昭和の典範の決定的な違い。

明治の皇室典範と大日本帝国憲法は、共に最高法規だった。現在の典範は、憲法の下にある一法律にすぎない。

政治家が責任を持って、国会が典範を改正しなければいけない。

皇位が政治的案件になった以上、天皇陛下や皇族方がこれについて意見を出せないという異常事態になっている。

本来であれば、我々が口を挟む問題ではないという慎みを前提にしなければいけない。

 

18:50~

高森/皇位継承には4つの論点がある。

<1>我々は皇室の存続を望むのか。

<2>皇位継承をめぐる皇室の現状をどう見るのか。

<3>現状の背景になっているものはどういう条件なのか。

<4>現状に問題があるとすれば、その打開策は何か。

 

19:45~

高森/第1の論点について。

戦後一貫して、ほぼ9割の国民が皇室の存続を望んでいる。

これは非常に高い数字。これだけ安定した国民統合の象徴がある。

 

22:20~

高森/皇室は日本において、国民の自由を守る役割を果たしてきた。

大政翼賛会が日本のナチスにならなかったのは、皇室があったから。

また、日本における平等を担保する役割も担っている。

 

23:35~

高森/「税金の無駄遣いをしてるんじゃないか」という雑音もあるが、具体的な数字も知らずに言っている。

内廷費と皇族費を合わせても、年間わずか6億円。国会議員は一人1億円。

税金で言えば、皇室の費用総額は、国民一人当たり200円。政党助成金は国民一人当たり250円。

こういう議論は好きではないが、こうした中で皇室の方々は祭祀や公務に取り組んで頂いている。そのことを国民は知らない。

私は皇室の存続を望む立場に、まずは立ちたい。

 

26:10~

高森/その上で、皇室の現状をどのように見るのか。(第2の論点)

天皇陛下ご自身、昨年(平成21年)ご即位20年の記者会見で、記者の方から「皇位の継承が危機的な状況にあるのでは」という質問があった。

それに対して陛下は「皇室の現状については記者の言う通りである」と仰った。

皇位の継承が危機にあると、陛下ご自身が公的な場で初めてお認めになった。

 

27:20~

高森/秋篠宮家に悠仁親王殿下がお生まれになったことで、皇室典範改正の動きがストップしてしまった。

男子一人お生まれになったも、皇室の危機は変わらない。

政治家は皇室について全く知らない。分からないものには手を出したくない。

下手に手を出したらバッシングされるので、手を出さない。

 

32:55~

高森/現状の背景には何があるのか。(第3の論点)

これまで言われたのは、ひとつはGHQ占領下に11の宮家が皇籍を離脱させられた。

それから秋篠宮殿下ご誕生以降、女子しか生まれなかった。たまたま偶然が重なった。

こう説明される。

しかし実は、その11宮家は現在存続の危機になっている。存続が可能なのは2家だけ。

そしてこれら宮家は、戦前のルールに基づいても皇籍を離脱していた。

女子が重なる偶然は、今後も起こりうる。

 

35:45~

高森/更に言うと3番目が抜けている。側室がいらっしゃらない。

一夫一婦制で男子が生まれ続けることは、非常に困難。

そして側室を廃止したのが昭和天皇。

 

41:35~

高森/打開策として、旧宮家系国民男子に皇籍を取得させようという議論がある。

でも誰が功績を取得するのか。ものすごく不自由な皇室に入る人物がいるのか。

そして、たとえ皇室に入っても、側室が無い状態では男系を続けることは困難。

更に皇室と国民との区別が曖昧になる。

だから天皇のお子様であれば天皇になれるよう、ルールを変えるしかない。


■その2

00:35~

宮城/沖縄は民俗的に男系絶対。女子は家を継げない。

そのため男子が生まれるまで子供を産まなければいけない。

これが男系絶対に無理がある例になる。

 

堀辺/今の話は、このままでは天皇がいなくなる日が来るということを示している。

 

小林/陛下がもし崩御されたら、現行典範のままだと皇太子がいなくなる。

そして悠仁様が天皇になる頃には、女性皇族が誰もいなくなる。

だから旧宮家系の男子を入れようという話が出てくる。

しかし男子と女子の生まれる確率は半々。側室が無く、子供の数が少なければ尚更。

国民がどう思うか、常識で考えなければいけない。

我々は一刻も早く皇位継承を安定させて、陛下に安心して頂かなければいけない。

それが陛下への恩返し。

側室が無ければ、男系絶対は続かない。これが絶対離してはいけない論点。

 

高森/皇太子がいなくなるというのは重要な問題。

畏れ多いが、皇太子殿下と秋篠宮殿下が続けてお亡くなりになる可能性もある。

 

21:20~

高森/また、夫婦別姓はシナ文化圏の慣習。

ここから離脱した日本の文化が夫婦同姓。


■その3

01:13~

質問者(女性)/女性天皇が結婚した場合、その相手は何と呼ばれるのか。

また、天皇という位が移ることが可能なのか。

 

高森/女性天皇のお相手は「皇配(こうはい)」殿下、もしくは「皇婿(こうせい)」と呼ばれます。

もう一方の質問、天皇の位が移るとはどういうことか。

明治典範では女性天皇が認められなかったが、それは男尊女卑のため。

現代において「女性天皇と男性が結婚したら、男性の方が上になる」と考えるのは例外的だろう。

 

06:45~

質問者(男性)/そもそも男系絶対という議論は、なぜ発生するのか。

 

堀辺/明治に男系絶対の皇室典範ができた。

そして「今まで男系で続いてきた」という慣性に従っているだけ。

 

小林/明治の典範を作るときに、女系を認めるかどうか議論している。

だから今は今の状況に合わせて議論すればいい。

しかしその議論を封じようとする。

 

高森/明治の時代も女系を認めようという典範のプランがあった。

しかし当時は帝国主義で、その時代背景を考慮する必要がある。

当時は男尊女卑が強く、女性天皇が「山田さん」と結婚して子供が生まれたら、その子が「山田の子」と見られがちだった。実際には違うにもかかわらず。

 

16:50~

高森/もし私が「皇室を無くしたい」と考えたとしたら、男系絶対を唱える。

 

堀辺/昭和天皇は五箇条の御誓文「旧来の陋習を破り」を支えとして、側室を廃止したのではないか。

また君主制を維持するために、知識を広く世界に求めなければいけない。

他国の君主制国家が、現在どのような制度になっているのか。目を向ける必要がある。

殆どの国家では「第1子優先」であり、男女で差別しない。これが今や「天下の公道に基づく」考えではないか。

 

宮城/男系絶対は、男尊女卑を強めたいのが目的ではないか。

 

堀辺/男系・女系の論議には男女の尊卑が深く根差している。

現代において男女の別なく皇位を継承するのは、国民に最も多く支持される道である。

 

小林/九州、特に博多は男尊女卑が当たり前だった。

どこかで付き物が落ちる瞬間がある。

「男は強くなければ生きていけない、優しくなければ生きる資格がない」という言葉を聞いたとき、すごくいいなと思った。

弱い奴ほど男尊女卑になる。

 

宮城/九州は男が威張っているが、奥さんが財布の紐を握っている。

 

堀辺/日本の古い時代では、女性が力を持つ時代が意外と長かった。

「たをやめぶり」が日本では重要。

女性天皇は、本来の日本人の感覚から言えば何ら不思議ではない。

 

宮城/男系絶対が「伝統」だというのは、明治以来でしかない。

 

36:00~

笹/私は男尊女卑があっていいと思っている。

差別は認められないが、区別は必要だと思う。

男性と女性でそれぞれ良いところがあり、それを尊重する。現代版の男尊女卑。

 

38:46~

質問者(男性)/基本は男系で、「保険」として女性宮家創設を認めるのはどうか。

また女性宮家が設立された場合、愛子内親王殿下と悠仁親王殿下の宮家では、どちらが優先されるのか

 

小林/それは頭の中だけで考えている。

国体は天皇と国民の相思相愛で成り立っている。

国民が皇室に関心を失ったら、皇室は終わってしまう。

国民が望むことと一致しないといけない。

悠仁様に皇位を移すのは、旧宮家系を入れるのを前提としている。

そうなると国民から離れていく。

皇室は頭の中だけで考えて成り立つものではない。


■その4

00:15~

高森/皇統は今、1500年ぶりの危機にある。

皇室全体を見渡して、傍系の宮家が一つしかない。

皇室典範改正の動きが遅すぎる。遅くとも眞子殿下がお生まれになる前に改正すべきだった。

今の質問者はバイアスがかかっている。

愛子様か悠仁様か、という属人的な議論ではなく、どういうルールを作るのかという問題。

そのルールは、やはり直系にするべき。

 

堀辺/『神皇正統記』は天皇を「代数」と「世数」で区別している。

傍系に移った場合は代数しか書いていない。

 

高森/悠仁殿下(傍系)には宮号が無い。

敬宮愛子内親王殿下とは、はっきりと区別がある。

今、男系を繋ぐために無茶苦茶なことをしようとしている。

だったら、きちんとしたルールを考えた方が良い。そのルールが直系。

 

13:00~

質問者1(男性)/女性天皇はお務めと出産が重なると、負担が大きいのではないか。

質問者2(男性)/もし皇位継承者がいなくなるという最悪の事態になった場合、日本はどうなるのか。

質問者3(男性)/左翼の叔父が「直系でいい」と言うので、逆に不安になった。

質問者4(男性)/悠仁親王殿下を皇太子殿下の養子にするという方法はどうか。

質問者5(男性)/男系論者は「女系を認めると新しい王制が始まる」と言うが、それは本当なのか。

質問者6(男性)/天皇陛下のご意志を反映するように法改正することはできないか。

質問者7(男性)/今上陛下が女系容認のお話をなさることはあるか。また女性天皇が即位後に男子が生まれたら、譲位をするということはあるか。

質問者8(男性)/皇室典範が憲法と並ぶ扱いだったときは、どのように典範改正がなされたのか、また今後の典範改正はどのように行われるべきか。

質問者9(女性)/小中学生に天皇の話をしたら、子供たちが「愛子様がいじめを受けたことに対する雅子様の対応はモンスターペアレンツだ」と言った。ここまで無知な現状で皇室典範を改正して、国体を守れるのか。

質問者10(男性)/天皇陛下の大変さは、傍にいなければ分からないのではないか。直系の方が陛下のお気持ちに触れやすいのでは。

質問者11(男性)/男系絶対主義者と男系左翼の見分け方は?

 

高森/1:負担が大きいのはその通り。だからと言って天皇そのものが断絶する局面とどちらを選ぶのか。答えは出ている。

2:言わなくても分かる。

3:左翼と結論が一緒だから不安になるのでは、まだまだ甘い。

4:民間と同列には扱えない。

5:後知恵の議論。同時代の感覚・法的位置づけでは女系と呼べるものもある。女系も皇統に含まれていれば権威がある。そもそも国民が皇室を支持するのは、男系だからではない。

6:根本的にはそうするべきだが、それで間に合うのか。

7:『ゴー宣』を読み直してもらいたい。譲位については、権威の主体が天皇と上皇で分かれる。その国民心理の分裂を招いていいのか。

8:明治の典範改正は、最終的に天皇のご意志で決まった。

9:女性週刊誌に載っている小林先生のコメントを見てほしい。

天皇と皇族は「君臣の別」に等しい。「皇室のご意志」とは「天皇のご意志」。

 

小林/このように議論を重ねて、公論を形成しなければいけない。

 

<終了>